埼玉で普通に生活するためには月収50万円必要?|マネーニュース

埼玉県労働組合連合会(埼労連)によると、埼玉県内で人並みに暮らすには月の収入にして約50万円が必要だという。埼労連と有識者がまとめた調査結果だという。

この結果を踏まえ、埼労連は「賃金の底上げとともに、教育や住宅の負担を下げる政策が必要」と指摘しているそうだ。

月収50万円となると、結構裕福なイメージである。しかし、調査によると、これくらいの収入がないと「普通の生活」ができないのだそうだ。

うーん。ちょっと無理があるような気がするが、とりあえず調査方法について検討してみよう。

調査方法

今回の調査は、2種類の調査をベースにしているという。

日常生活でのお金の使い方に関する「生活実態調査」と、生活に必要な持ち物に関する「持ち物財調査」である。

つまり、日常的に食事や消耗品を買ったりした場合の支出と冷蔵庫や洗濯機などある程度の期間所有しているような持ち物などに使うお金を調べたということか。

これらの調査に係るアンケートを、埼労連の組合員など3000人だったという。2016年1月にアンケートを実施し、3か月で597人(有効回答率約20%)が答えたという。つまり、調査の対象となったのは、主に組合員で、一般県民ではないということか。

調査結果を分析する上で、回答者の7割以上が持つ物を「必需品」とし、それを持つ生活を「普通の生活」と定義したらしい。

しかし、その「必需品」でも、グレードによってかなり値段のバラツキが生じると思うが。例えば、洗濯機は、約6万円のものを基準にして、耐用年数を国税庁が定める6年として計算しているようだが、これはどうだろう。親族や知人から譲り受けたものを使う人もいれば、10万円以上する高級品を使っている人もいるだろう。

つまり、「必需品」そのものについても、かなりばらつきがあるため、正確な数字を出すのは難しいと思う。

回答者がよく買い物をしている店などで実際の価格も調べたという。調査としては結構力を入れていると感じるけれど、どこまで徹底的に調べられたのか。

調査結果 モデルケース毎の検討

上記のような調査の結果、モデルケース毎に必要な収入が導き出された。なお、いずれのケースでも、夫が正社員で妻はパート勤務、車はない設定だという。

車が無い設定というのは、いささか現実と異なると思うが…。

30代夫婦で小学生と幼稚園児を持つ家庭のケース

さいたま市郊外で月5万5000円の賃貸住宅(2LDK、約43平米)で暮らす1カ月の生活費は以下の通りだという。

・食費 約10万8000円

・交通・通信費 約3万8000円

・教育費 約2万7000円

・教養娯楽費 約4万6000円

計約43万円

まず、私の感覚からすれば、4人家族で43平米の住居に暮らすというのが少し考えにくい。平均にしても、最低60平米くらいはあると思うのだがどうだろう。私の感覚がずれているのか。

2008年に行われた前回の調査と比べ、教育費と教養娯楽費が合計で3万円近く増えたほか、交通・通信費も1万円余り増えるなど、約6万8000円増えたそうだ。10年も満たない間に7万円近くも出費が増えたということだが、デフレはマシになってきているのか。

この支出のためには、税や社会保険料を加えた額面で考えたとして、約50万円の月収(年収にして約600万円)が必要だという。しかし、厚生労働省の調査によると埼玉県内の30代男性の平均年収は約411万円だという。実際の平均年収が200万円近く足りてないという計算になる。

平均年収は、中央値を拾ったものではないので、一般には実際よりも高くなる傾向がある。その平均年収よりも、支出額の方が大きいと調査は見ているようだ。そんなことがあり得るのか。

40代夫婦で中学生と小学生の子供がいる家庭のケース

同様の計算で、額面の月収は約54万円(年収約650万円)が必要。この世代の平均年収は485万円とのこと。

50代夫婦で大学生と高校生の子供がいる家庭のケース

同様の計算で、額面の月収にして約68万円(年収約820万円)必要。この世代の平均年収は、545万円とのこと。

専門家のコメント

調査をまとめたのは静岡県立大学短期大学部の中沢秀一准教授。中沢教授によると、「妻のパートでは足りず、子供は奨学金を借りる。無償の奨学金や住宅補助の制度を充実させないと子供の将来はさらに厳しい」とのこと。

調査の疑問点

さて、今回の調査の結果、埼玉県で「普通の生活」をするには、約50万円の月収が必要と埼労連は結論を出したようだが、様々な疑問点が沸く。

まず、実際の出費が平均収入を上回っているという実態はどういうことか。

調査だけを基に考えると、実際の出費が平均収入を上回っているということになるが、それはどういうことを示すのか。まさか、みんな借金しているというわけではあるまい。

つまり、実際の支出が実際の平均収入を上回っているという調査結果が出ることによって、皮肉にもこの調査の信ぴょう性が問われるようなことになってしまっている。

また、調査対象が、主に埼労連の組合員ということで、考え方によっては埼労連の組合員の出費が平均年収以上ということになり、ひいては埼労連の組合員の年収が平均年収よりも高いという風にも捉えることができる。

埼労連自体がいわば労働者側の組織であり、最低賃金を上げることを目標にしているところもあるので、平均年収が「普通の生活」を営むには足りていないという調査結果は、ある意味埼労連のポジショントークに沿ったものであるともいえる。

 

参考資料:
・松浦新、『埼玉で人並みの生活、月収50万円必要 県労連が調査』、朝日新聞デジタル、2017年4月17日、http://www.asahi.com/articles/ASK4J3VPPK4JUTNB004.html